キャンセルをめぐって2
▼ 登場人物 ………
居酒屋にて
清水勇二:飲食店勤務 25歳
矢部友也:勇二の友人 25歳
野崎 :お客様
………………………
友也は、勇二の言葉を笑いながら遮った。
「おいおい、まずは店に入ろう!」
友也は続けて言った。
「込み入った話のようだが、どっちの店に行く?」
勇二は言った。
「飲みながら話すか」
「オッケー」
と友也は言い、2人は居酒屋に入っていった。
ビールとつまみ数品を注文した後、友也が切り出した。
「客がどうしたって?」
「それなんだけどさぁ」
と言って、勇二は友也に聞いてほしくてたまらないような表情を向けた。
「昨日のことなんだけど、客から電話が掛かってきたんだ」
勇二は、電話の内容をかいつまんで友也に伝えた。
** 昨日、勇二に起こった出来事 **
昼のピークタイムを過ぎた午後2時ごろ、レストラン「ジーロ」の電話が鳴った。
勇二が電話に出た。
「はい、レストラン、ジーロでございます」
「今日、6時に予約をしていた野崎なんですけど」
と男性の声が聞こえてきた。
「6時からご予約の野崎様ですね。
ご予約ありがとうございます。
えーっと、本日、10名様で承っております」
と勇二は言った。
勇二は日頃、何時に誰が何名で来店されるか、頭の中に入れようとしている。
「急で申し訳ないんですが、予定が変更になったので、
今日の予約をキャンセルしたいんです」
と電話の向こうから聞こえてきた。
勇二は、思わず、
「キャ、キャンセルですか」
と、びっくりした声でオウム返しをした。
当日キャンセルは初めての体験だ。
『当日キャンセルって……、厄介な客だな』
勇二は、心の中で呟いた。
だが、マニュアルに沿って対応しようと気持ちを落ち着けた。
「かしこまりました」
と勇二は返答をしながら、
「申し訳ございません。
当日キャンセルの場合、キャンセル料をいただくことになりますが」
と言った。
野崎は声を荒げた。
「キャンセル料?!
そんな話、聞いてないよ!!」
勇二の心臓が、一気に高鳴り始めた。