現場の真実<2>苦情メール   

(7)     (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
       (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20)
       (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30)
       (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38)


仕事を終えた沙希が、由美の家にやってきた。

「ゴメンね。遅くなって」

「そんなことないよ。お疲れ様。
お店、忙しかった?」

「いつもの人数よりも2人も減ったので、てんてこ舞いだった。
疲れたー」

「今、お茶入れるね。
ゆっくりしてて」

「ありがとう」

2人は、お茶を飲みながら向き合って座った。


由美と沙希は、同級生だが、一緒に道を歩くと、姉妹に間違われることが多くあった。
由美が姉で沙希が妹だ。
学生の時から、由美はどこか大人びた雰囲気があった。

「ねえ、電話でどうしても話したいことがあるって言ってたけど、何?」

と由美が言った。

「そうそう、今日の忙しさで、何を話すのか忘れてた。
うーん、どこから話したらいいかな」

沙希は、頭の中を整理しようと少し沈黙になった。
そして話し始めた。

「この前、店長に呼ばれて、もっとお客様のことを考えながら仕事をしてほしい、と言われたの。
こういう話になったのも、お客様から苦情のメールが来たことがきっかけなんだけど」

「へー、どんな苦情?」

「料理は遅いし、サービスは悪いし、もう二度とお店には行きませんって内容だったんだけどね」

「ふーん。
うちの店でもあるわよ。
商品が気に入らないとか、販売員がずうっと傍にいて、うっとうしいとか」

「そうなんだ〜。由美の店でもあるんだ」

「あるわよ。
お客様のためにと思ってしたことでも、お客様の期待とは違っていたということが」


「わたし、苦情って初めてだったから、いろいろなお客様がいるなー
なんてことしか感じなかったの。
それが、感じの悪い対応をしたのが私だと思われているようなことを店長が言うものだから、
だんだん仕事が面白くなくなってきて……。
その上、店長からお客様に満足していただける店づくりをしたいと言われて。
何をどうしたら良いのか。
頭の中が支離滅裂」

沙希は、今の気持ちを由美に訴えた。
由美は、沙希がしゃべり終わったころを見計らって口をはさんできた。

「昨日、沙希が、店長から電話がかかって店が忙しいとか言った後に、
やんなっちゃうって言ったじゃない?」

「え〜、そんなこと、言ったっけ」

「忘れたならいいんだけど。
わたしのことを気遣って言ってくれたんだと思うけど、
店長が困っている時に協力するのは当たり前じゃないかと思って」


沙希の顔が一瞬にしてこわばった。

由美は、沙希の表情が変わっても、そのまま話を続けた。

「店長が沙希を名指しにしたのは問題かもしれないけど、
そこだけをピックアップして考えるのもどうかと思うよ」

由美も神妙な顔になった。

「実はね、わたしも、つい最近、店長に叱られたの」

*** *** *** *** ***
 前に戻る≪≪(7)≫≫続きを読む
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
  (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20)
  (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30)
  (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38)