現場の真実<2>苦情メール   

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「わかりー、あ、かしこまりました。失礼致します」


沙希が店長室を出ようとした時、杉山が呼び止めた。
そして言った。

「今回の件ですが、お客様が誰に対して苦情を言われているのかを
突き止めようとしているわけではありません」

沙希は、杉山のほうを振り向きお辞儀をした。
そして小走りで所定の場所に向かった。
できるだけ早く、この場所から去りたいという気持ちが、沙希に小走りさせていた。


杉山との話は、すごく疲れた。
結局何だったのか。
沙希は、開店準備をしながら考えた。

『お客様に喜んでもらえる仕事を、
パートさんからの指示などなくても考えて行いなさいということか。
犯人捜しをしないということは、結局は、私を疑っているままか』

その夜、由紀子は自宅に帰ると、早速友人に電話をした。
コンピュータ会社に勤めている同級生の佐々木徹だ。

「ひさしぶり。
ねー、いつものメンバー4人で会える日ない?
飲みにでも行こうよ」

沙希が言うと、

「お、久しぶり。
俺、今忙しくてさ。
仕事任されて、てんてこ舞い状態なんだ。
2週間ぐらい先だと、少し落ち着いてくると思うけど」

「あ、そう、頑張ってるんだ」

「うん、大変だけど、けっこうヤリガイがある」

「へー、すごいね。
まだ新入社員だっていうのに」

「まあな。
人手不足なんだろうけど」

「ふ〜ん、いいね」

「いいねって、何だよ。
お前のことだから頑張ってるんじゃないの」

「そうよ、頑張ってるわよ」

沙希は、徹の明るい雰囲気に負けじと活気のある声で言った。
だが電話を切った後、またぐっと落ち込んだ気持ちになった。

沙希は、次に宮本由美に電話をした。
由美はアパレルショップに勤務をしている。
学生の時から、洋服に興味を持っていて、アパレルショップに勤務したいと言っていた。
多くの学生の中でも、目を引くセンスがあった。

「由美、いつものところで会おうよ」
「オッケー。
ではいつにする?」

沙希は、由美とは1か月に1度か2度の割合で会っていた。
互いの休みも知っている。
沙希は、とにかく早く誰かと話がしたかった。
電話で話せばよいが、やはり顔を見ながら相手の反応も見たかった。

そこで、2日後にいつもの場所でいつもの時間に会うことにした。

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