現場の真実<2>苦情メール   

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『バイクを買った時から休みが増えた。
バイクを買うためにバイトしているって言っていたので、
買った途端にやる気が無くなったのではないかな。
これだけ、毎週毎週、それも忙しい日に休みが入ると、他のアルバイトさんへの士気にもかかわる。
本当に病気かもしれないけど、怪しいな。
さあ、どうしよう』


沙希は、山田に確認したい気持ちに襲われた。
だが、本当に病気なら疑ったことになる。
そうなると、山田の士気を下げてしまう。

いろいろと考えた結果、沙希は、今回は黙っていることにした。

山田が、店に出てきた。

「山田君、体調どう。
最近休みが重なったけど、大丈夫?」

「すみません」

山田は明るく言ったが、その目は笑っておらず、微妙に沙との視線とも合わなかった。
沙希は、疑いから確信の気持ちに変わった。


また次の週、山田から電話が掛かってきた。

「申し訳ございません。
母から体調が良くないという電話をもらったので家に帰ってきたいと思います。
ご迷惑をお掛けしますがお休みさせてください」

「えー、今度はお母さん!」

沙希は、おもわず声を大きくして言った。

「すみません」

『本当にお母さんの体調が良くないの?』

と聞きたい衝動に駆られた。
バイクに乗りたくて、嘘を重ねているのではないか。

『どうしよう。聞こうか。
それともこのまま何も聞かずにいたほうがいいか。
ああどうしよう……』


「わかった。気をつけてね」

沙希は、山田の言葉に対して、質問を投げかけるのを止めた。

『次回来た時、聞いたほうがいいな。
だんだん嘘の上に嘘を重ねていっているような気がする』

数日して、山田が出勤してきた。

「おはようございます。
お休みして、すみませんでした」

山田の表情は、なぜか明るかった。

「お母さんの様子、どうだった?」

この言葉を聞いた時の山田の視線が、一瞬ではあるが空をさまよったような感じを受けた。

「大丈夫です」

山田は、言葉少なく笑顔で応えた。

『やはり嘘をついている』

沙希は、仕事が終わった時、山田と話をしようと思った。
そこで、山田に声を掛けた。

「山田君、前回の喫茶店で、少し話がしたいんだけど」

「あ、はい」

山田の表情に、少しだが動揺が走った。

喫茶店で、佐藤と沙希は、向き合って座っていた。

「山田君、体調はどう」

「はい、大丈夫です」

山田は以前、この喫茶店で話をした時とは、表情、言い方が違っていた。
真正面から沙希を見るのではなく、少しはすに構えていた。


沙希は思い切って話を切り出した。

「山田君、バイクを買ったんだって」

山田は、少しびっくりしたような表情をしたが、また元に戻り言った。



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