現場の真実<2>苦情メール   

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また数日してからのこと。

山田から電話が掛かってきた。
沙希が、その電話を受けた。

「申し訳ございません。
体調が悪くて。今回も休ませていただきます」

「また体調が悪いの?」

「はい、風邪をぶり返したようで」

「病院に行った? 」

「これから行こうと思います」

「そう。病気だから仕方がないけど。
今まで、全く病気もしなかったのに、急に体調が悪い日が増えて心配だわね」

「申し訳ございません」

電話のやり取りで、沙希は体調が悪いような声ではないと感じた。
弱々しそうな声を出してはいるが、時々いつもの元気の良い声が混じる。

『やはり何かがある』

沙希は、他のアルバイトに、今日も山田が休みであることを伝えると同時に、
最近の山田の様子について、さりげなく聞いた。

「最近、山田君、病気がちだけど、夜遅くまで遊んでいるとかあるのかなー。
田代君、何か聞いていない?」

沙希は笑顔で、山田と同じ時期にアルバイトを始めた田代啓太に、さりげなく声を掛けた。

「夜遅くまで遊ぶなんてないと思いますよ。
金欠病だ、なんて言っていましたから。
そりゃそうですよね。
やっと念願のバイクを手に入れたのですから」

「手に入れたって?」

「バイクを買うために働いている、なんて山田君、いつも言っていたじゃないですか」

「えー、買ったの?」

「え? 佐藤さん、知らなかったんですか。
先週、バイクが来て、初乗りしたなんて言っていましたよ」

「えー、聞いていない。
働く時間帯が違っていて、先週、ほとんど会えなかったのよ」

「やっぱりバイクはいい、なんて言っていました」

『そうなんだ。
念願のバイクを買ったんだ』

「今日、体調が悪くてお休みっということなので、田代君、忙しくなると思うけどよろしく」


沙希は、山田に対してあることを勘ぐり始めていた。


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