現場の真実<2>苦情メール   

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イタリアンレストラン「ブレイク」に、新人社員が配属されてきた。


その名は、服部明日香。
佐藤沙希は、先輩になった。

「服部さん、昨年入社の佐藤沙希です。
よろしくお願い致します」

「服部明日香です。
どうぞよろしくお願い致します」

「服部さんには、いろいろと店のことについて教えていきたいと思います。
今日は、お客様がお帰りになった後の下げ物を中心に行ってもらいます」

「わかりました」

「服部さん、後から下げ物の仕方など教えていきますが、
まずは、接客用語について、一つ教えておきたいと思います。
今日からは、受け応えは『わかりました』ではなく、『かしこまりました』でお願い致します。
今まで「かしこまりました」という言葉は、使ったことがありますか」

「いえ、ありません」

「最初は使い難いかもしれませんが、承りますという気持ちでお願いします」

「はい、かしこまりました」

「いいですね。
では、よろしくお願い致します」

『私も、店長に言われたことを思い出す。
たった数ヶ月前までは、服部さんと同じだったのに指導役か』

沙希は、複雑な気持ちになった。
だが、何だかウキウキしたような感情もあった。
    


そんな時、お客様から、

「ちょっと注文取りにきてよ」

と少し怒ったような声で言われた。

「あ、申し訳ございません」

「2人で話ばかりして、感じが悪いわね。
私たち、急いでいるのよ。
私たちの悪口でも言っていたんじゃないの。
こちらを見て、ニタニタ笑っているように見えたわよ」

「申し訳ございません」

沙希がお客様の傍から離れ、いつもの待機場所まで来ると、服部が近付いてきた。

「佐藤先輩、すみません。
お客様から何か怒られたんですか。わたしのせいですね」


「そんなことないわよ。
こんなところで話していると、またお客様から私語をしているように思われてしまうので、
下げ物の仕方について、あちらの、お客様から見えないところで教えますね。
あ、それから佐藤先輩ではなく、佐藤さんでいいです」

「佐藤さん、かしこまりました」

「いい調子。
それでお願い致します」

『お客様の顔を見て、ニタニタなんかしていないのに、何をお客様は言っているのかしら。
こういうことを言われると、またまたやる気がなくなってしまうのよね。
でもなぜお客様は、私たちの悪口を言っていたんじゃないの、と言われたのか』

服部の指導をしながら、沙希は、お客様の言葉を反芻した。

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