現場の真実<2>苦情メール   

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「仕事を任された時、どのような仕事をしようと思っているかって。
言われたことをしようとしています、と言ったら、
「言われたこととは」なんてまた聞き返されちゃって。
「ですから、言われたことを」とまた返したら「そこに問題がある」と言われたんだ。

上司が期待している仕事とは、依頼した上司がイメージしている出来であること。
まずはそれが正解の仕事だと。
上司が、どのような仕事をしてほしいと思っているか、しっかりと聞いておかないと、
上司が行ってほしい仕事とはズレてしまう。
もっといえば、上司の期待以上のことをしてくれると、より良いけどね、とも言われた。

最初、何を言われているのかわからなかった。
たかだかポスター貼り。
貼ればいいと思っていたので。

でも、どこに貼ればお客様の視線に入りやすいとか考えなければならないということだったんだ。
ポスターを貼ってくれと言われて、ただ貼っているようでは、仕事を行ったことにならないんだと。

ではこのポスターを貼る時、自分勝手に貼らず、どの場所に貼るのか、
貼り方の注意点などを、もっと聞いてから行わないと、
初めて貼るのならわからないでしょう、とも言われたんだ」


「うーん。考えさせられちゃうね。
今まで、言われた仕事を深く考えていなかった」

と由美が言った。

「うーん、私も」

と沙希が言った。


徹は、しばらく黙っていたが、おもむろに言葉を発した。

「そうか。何となくわかってきたよ。
俺って、上司から指示を受けた時、はいっと受けた後、
わからない点があっても、自分なりの解釈で行ってきたんだ。
そのほうが、いちいち聞くよりも、上司の手間を省けるとか勝手に思って。
上司からしてみたら、最初は我慢していたのが、
こちらが一向に成長しないもんだから、だんだん腹が立ってきたんだろうな」

「俺達の考えていることと、上司が考えていることとは、大きく違うかも。
それが、自分の考え方は正解だと自分勝手に行うと、
上司からしてみたら、腹立たしい仕事内容の時があるかもしれない」

「これって、お客様の視点で考えなさい、ということと同じだね。
お客様のことを思って行っているつもりが、自分勝手なことを行っているなんてね」

「お、佐藤、成長してますねー」

健志は、茶化すように言った。
皆でどっと笑った。

「俺ってさ。
自分の能力は高いと、だんだん自分勝手な仕事を行っていたような気がする」

「ちょっとぐらい違うのはいいかもしれないけど、
上司が行ってほしいこととあまりに違うと、
上司からしてみたら、仕事をしてくれないほうがかえって良かった、ということにもなる」

「お前ってきついこと言うなー」

と言いながらも、徹の表情は明るくなってきていた。

「上司も、そのことを言いたくても、言えなくて、感情が先に立ってきたんじゃないか」

「上司から指示をされた時は、
どのような仕事をしていけば良いのか上司の立場に立って考えることが大切なんだな」

「でも、上司の立場で考えるって具体的には、どうしたらいいの?」


沙希の質問で、またまた、その場は沈黙してしまった。

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