現場の真実<2>苦情メール   

(26)     (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
       (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20)
       (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30)
       (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38)



「へー。徹君でもそういう時があるんだ」

沙希は、徹の顔を覗き込むように言った。

「何だよ。その言い方」

「だって、この前電話した時、やる気の塊みたいな感じの声だったので、うらやましかったの」

「あの時はね。仕事が楽しいというか……」

「徹君らしくないね」

と由美が言った。

「それなんだよね。らしいって何なんだよ」

と徹は、少し声を大きくして言った。

「何よ。急に怒ったりして」

と由美が言うと、徹は応えた。

「あ、ゴメン。その上司がさ、よく言うんだよね。
佐々木らしい仕事をしろって。
思わず、佐々木らしい仕事って何ですか、と言ってしまったんだ」

「それで、その上司とぎくしゃくした感じになっているんだな」

と健志が言った。

「そうなんだ。
上司は、その後何とも思っていない行動には見えるけどね。
俺のほうが、ひっかかっているのかもしれない」


徹は、やっと自分の心情を話始めた。


「俺は、一生懸命仕事をしているんだけど、どうもその結果に対して、上司は不満みたいなんだ。
よしやったと思って報告に行くと、こんな仕事を頼んだわけじゃない、なんて。
そんなことを言われても、どうしたらいいのかわからないよな。
みんなそう思わないか」

しばらく沈黙になったが、その後、沙希が言った。

「うーん。
上司がそう言うのには、何か訳があるんじゃないの」

「何だよ。同意してくれると思ったのに」

「たぶん、数ヶ月前の私ならそうだったと思う。
最近ね、わたしも考えさせられることが多くて。
何かあるんじゃないか、なんて思っちゃうの」

その時、由美が言葉を挟んできた。

「最近の沙希って、ちょっと変わったのよ。
仕事に対しての考え方が」

「てへ。というか、それ褒めてない」

「これでも褒めてんのよ」

と由美は、沙希を見て言った。

「ありがとう。
これも、皆さんのお蔭です。
いろいろと助言してくれるので、少しは、成長したでしょうか、なんてね」

この時、健志が口を開いた。

「徹の気持ち、わかるよ。
上司によっては、変なことばかり言ってくる奴いるもの。
これで上司か、なんて」

「だろう。
こっちが一生懸命仕事しているのに、仕事をしていないなんて言われたら、どうしようもない。
何だか仕事に対するやる気が失せちゃって」

「そういう時は、友達と会うのが一番ね。
徹君に電話した時、わたしも相当悩んでいたの。
わたしなんかチャランポランに仕事をしていたから、
急に上司から、責任を持って仕事をしてくれなんて言われてもどうしたらいいかわからなくって。
今もってわからないけど、お客様の視点に立って、ということが、少しずつ見えてきたような気にもなったりして」


徹は、少し驚いた表情を交えて沙希を見て言った。


「へ〜。
沙希ちゃんの口からそんなことを聞くことができるなんて。
成長したな〜。
俺が言うのも変だけど」

「でしょう。
一番何も考えていなかった沙希が、この数ヶ月で成長してるのよ」

沙希は、少々照れながら言った。

「わたしの話はいいの。
徹君、なぜ上司の人が、そんな仕事を頼んでいないって言ったの?」

「そんなこと知らないよ。
こちらは言われた通りしているんだから」

「でも、上司の人はそんな仕事を頼んでいないって言うんでしょ」

と沙希は問いかけた。

*** *** *** *** ***
 前に戻る≪≪(26)≫≫続きを読む
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
  (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20)
  (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30)
  (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38)