現場の真実<2>苦情メール   

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明くる日の朝礼の終わりがけの時。

「以上で今日の連絡を終わります。
その他、何かありましたら、お願いします」

と店長が言った。

その時、

「あのう、よろしいでしょうか」

と沙希が手を挙げた。

「はい、佐藤さん」

「あのう、昨日、お客様から料理の催促を受けた件なのですが、
どうも調理場にオーダーが通っていなかったように思われます。

いろいろな原因があるかと思いますが、
まずは、オーダーを通すためのハンディーターミナルに問題はないかどうかの
検討をしておきたいと思います。

後でハンディーターミナルを一つ一つ見ていき、
確認が終わったものだけ、所定の位置に戻しておきます。
よろしくお願い致します。

今後、ハンディーの調子がおかしいと思われた時は、ぜひ声掛けをしてください。
チェックをしていきたいと思います。

またハンディーですが、
慣れてくると、送信ボタンを押したかどうかの確認を怠ってしまいがちです。
再度、基本の徹底をよろしくお願い致します」

店長の杉山は、少々ビックリしたような表情を沙希に向けた。
そして言った。

「佐藤さん、ありがとうございました。
では皆さん、オーダーミスが起きないように、再度注意をしてまいりましょう。
では、朝礼を終わります。
今日も一日、よろしくお願い致します」

「お願い致します」

沙希は、朝礼で初めて意見を述べた。

昨日、アルバイトの山田とは話をしたが、
山田だけの問題ではなく、自分も含め、全員が気を付けていかなければ、
また同じことが起きてしまうように思えたからだ。

差し出がましいとは思ったが、今言っておかなければ、という気持ちになったのだ。

今までの沙希であったら考えられないことだった。
沙希本人も、自分の言動にビックリしていた。

「誰が、オーダーミスしたの?」

朝礼後、古参パートの鬼頭が、沙希に声を掛けてきた。

「いえ、誰がミスをしたということではないのですが」

「私じゃないわよ」

沙希の言葉に対して、すぐ鬼頭は返答した。

「そんなことはわかっています」

と沙希は笑顔で鬼頭に言った。

「え? ということは、誰がミスをしたのかわかっているの?」

「いえ、そういうことではなく、みんなで注意していきましょう、ということで……」

「そう、でも私じゃないから」

『………』

沙希は、鬼頭の強い口調に対して、何も言うことができなかった。
ただ笑顔だけを向けて、作業に戻った。

誰が犯人ということではなく、互いに注意しあいましょうという意味で言ったのだが、
鬼頭にとっては、「誰がミスしたか」が大きなポイントになったようだ。

沙希は考えた。
誰がミスしたかを追求したほうが良かったのか。

「昨日、オーダーミスが発生しました。
どうもハンディーターミナルで入力した後、転送をしていなかったように思われます。
このミスに対して、誰か心当たりの人はいないでしょうか」

と聞いたところで「わたしです」という人がいるのか。

店内で起こったことは、店全体の責任として捕らえたほうが良いと思うのだが。

仕事を終了し携帯電話を見ると、コンピューター会社勤務の佐々木徹から電話が入っていた。

『え、徹君から。何かあったの?』

沙希は、早速 徹に電話をした。

「先日はゴメン。時間が取れなくて」

「ううん、いいのよ。忙しそうね」

「……最近会っていないけど、みんなで会わないか」

「会いたい、会いたい」

徹が他のメンバーにも連絡を取り、同級生4人が次の週に会うことになった。

『徹君から電話があるなんて珍しい。何かあったのかしら』

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