現場の真実<2>苦情メール   

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数日経った休みの日、沙希は、デパートに出かけていった。
それは笑顔探しをするためだった。

「いらっしゃいませ〜」
「どうぞご覧ください」

通路を歩くと、販売員からの声が掛かる。

『いらっしゃいませとは言っているけど、何となく、ただ言っているだけに聞こえる。
だって、無表情で、誰に声を掛けているのかわからないんだもの。
といって、わたしに話しかけられても困ってしまうけど』

沙希は、あるブランド店に入った。

「いらっしゃいませ。
どうぞご覧ください」

販売員が、声を掛けてきた。

『この人も笑顔があるとは感じないな。
あ、そうか。
目が笑っていないからだ。
口元だけがかすかに笑っているようには見えるけど。
笑顔風なんだけど、何だか恐い印象すらしてしまう表情だな』

また違うブランド店に入る。

「いらっしゃいませ」

『ここは、すぐ客の傍にはやってこないんだ。
客に、ゆっくりと店内を見てもらおうとしているのか』


沙希は、セーター売場で足を止めた。

『あ、これ、かわいい。
バーゲン商品で安くなっている』

とセーターを手に取り見始めると、

「いかがですか。
どうぞ、鏡の前で当ててみてください」

と販売員が話し掛けてきた。
優しい笑顔で、何でも相談できそうな雰囲気の持ち主である。

『この方の笑顔はいいなー。
とても自然でソフト。
こういう方に話しかけられると、ホッとする気持ちになる』

「あー、ステキですね。
ピンクがとてもお似合いです」

と沙希の顔を見てニコッと笑った。
とても優しい笑顔である。

「こちらは、色違いもあるんですよ」

『でも、ピンクがいいな〜。
買おうかな』

「わたしは、ピンクが一番お似合いのように思います」

と、またまた優しい笑顔を向けてくる。

『わたしの気持ちがわかったのかな。買
っていこっと』

沙希は、セーターを買って店を出た。

『あの方の笑顔、とっても良かった。
自然で、信頼がおけるっていうか。
嘘を付かれていない感じがした』

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