現場の真実<2>苦情メール   

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朝礼に参加していた他のメンバーも緊張した面持ちになった。

佐藤沙希は、最初うつむき加減ではあったが、杉山の目を見て、はっきりとした口調で言った。

「あ、ありません!」

店長は、その言葉を黙って聞いた。
そして、メンバー全員に視線を向けて言った。

「今後、こういうことがないように、皆さん、よろしくお願いします」

朝礼が終わった。


オープンに向けて掃除をしている時、佐藤沙希はアルバイトの山田に声を掛けた。
沙希と山田とは、年齢で言えば3歳ほどしか違っていない。
そのため、沙希は山田とはよく話をしていた。

「ねえ、なぜ店長は、私の名前を挙げたんだと思う。私とでも思ったのかしら」

山田は、明るい声で言った。

「そんなことはないと思いますよ」

沙希の心をホッとさせるような言い方だった。

「だって、それなら私を名指ししなくてもいいのに」

沙希は、救いの言葉を山田に求めていた。
山田は、掃除の手を休めずに言った。

「それは、社員だからじゃないですか」

沙希には、社員という自覚よりも、
仕事を覚えていかなければという気持ちのほうが大きかった。
アルバイトの山田のほうが、社歴としては先輩だった。

「社員と言っても新入社員よ」

沙希は、自分は未熟であるということを言いたかった。

「佐藤さんの名指しだと、角が立たないからじゃないですか」

沙希は、山田の言葉を受けて言った。

「山田君って難しい言葉知ってるのね」

「バカにしないでくださいよ。
朝から気分が滅入るなー」

山田は、少しおどけた表情を沙希に向けた。
そして続けて言った。

「まあ、気にしないでいきましょうよ」


沙希と山田が話をしている時、店長の杉山がやってきた。


「佐藤さん、掃除が終わったら店長室に来てもらえますか」

沙希はびっくりした表情を店長に向けた。
そして、思わず、

「えー。あ、はい、わかりました」

と返事をした。
すると、その言葉を受けて杉山は言った。

「わかりましたではなく、かしこまりましたでしょう。
言葉はきちんと使ってください」

「あ、はい、かしこまりました」

沙希は、また滅入ってきた。

『え〜何。やっぱり私のこと、疑っているの。
やだな〜、もう』

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