現場の真実<2>苦情メール   

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「またまた健志君のひょうきん者が出てまいりましたねー。
で?」

と沙希は、テーブル越しに、前に体を乗り出すようにして言った。

「続き、聞きたい?」

と健志はもったいぶるように言った。

「何言ってんのよ。
ここまで話してきているのに」

「よく考えたらさー」

「何よ」

沙希は、ぷっと頬を膨らませて怒っているような表情を作った。

「サンドウィッチには、どんなドリンクが合うのでしょうか」

と健志は、沙希の表情を無視して言った。

「はいはい、わかりましたー。
ドリンク付きのサンドウィッチセットで注文します。
何だか私もお腹が空いてきたので、同じものを2つ注文しよっと」

「ありがとうさん」

沙希は、健志と話していると、嫌だったことを忘れていき、
ウキウキしたような気持ちになっていくことを感じていた。

「さあ、サンドウィッチも来たことだし、続きを話してよ」

「うん。
もったいぶらずに話すとするか」

と健志は言って話始めた。


「さっき言ったさあ、お客様にも気持ちがあるってことなんだけど、
最近、このことについて考えるんだ。
こちらに、横柄な態度をとっている客やひやかし客などを見ると、
何だよあいつら、なんて思っていたんだけど、
なぜあんな態度をとるんだろう、って考えるようになってきたんだ。
それぞれ、事情があるんじゃないかって。
例えば、今月は、テレビを〇台売れ〜なんて上司から言われると、
とにかく売らなくてはならないと、お客様が売場に来られたら、
すぐ近付いていって、いかがですか、なんてやっていた。

でもね、近付くと俺から離れる客や、いかにも嫌そうな顔をする客がいて、正直
『何だよ。こちらだって好きでやってんじゃないよ』
なんて、言葉には出さないけど、ムッとした表情を、客に向けていたように思う。
それが、お客様の立場からしたら、
買いたいとも思っていないのに傍によってきて、
「いかがですか」
なんて言われても、買うつもりないんだもんな。
しつこいとムッとした表情を向けたくもなるよ。

もし俺が客の立場だったら、
「しつこいよ」
なんて、言いたくなってしまう。
自分がお客様の視点に立って考えて見ると、
「そりゃ嫌だよ」
と思う点がだんだん見えてきたんだ」

「へー、すごいね。
そう言われてみれば、お客様の視点で考えるって、今までほとんどなかったような気がする」


「自分が買物をする時は、サービスについて、すごく敏感に感じるんだよね。
〇〇店の販売員、すごく親切だな、〇〇店と大違いなんて。
でもこれは、客で買物をしている時にそう思っているだけで、
自分が販売員側に立った時は、この気持ちを忘れて、自分にとって嫌な客に出会うと、
『なんだよあの客、嫌な客だな』
なんて思う」

「うんうん、私もそう。
この間、〇〇スーパーで買物をしたら、
レジ担当者が数名、レジカウンターに集まって、ベチャベチャ話していたんだよね。
何だか気分が悪くなっちゃった」

と沙希は話しながら、ハッと気がついた。

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