現場の真実<2>苦情メール   

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1時間弱待っていると、健志がやってきた。

「ごめん、待たせた」

「ううん、こちらこそごめんね。
何にも連絡無しで来て」

「へー」

健志は、感心したような表情を沙希に向けた。

「何よ、へーって」

「いや、ちょっと変わったなって。
学生の時だと、何分待たせるつもり、なんて言っていたけど、大人になったな」

「大人になったって何よ。
それって嫌味」

「嫌味じゃないよ」

「ふーん、ではありがとうとでも言っておこうかな」

2人は、目を合わせて笑った。


沙希は、先ほど健志について感じたことを話し始めた。

「たけちゃん、仕事頑張ってるね。
仕事している時の顔は、けっこうカッコ良かったよ」

「当たり前だよ。
今は、お客様に商品を買ってもらって、また次に来てもらわないと俺の給料が出ないんだから。
アルバイトしていた時は、こんな気持ちにはならなかったけど、
社会人となると、お客様に気に入ってもらわなくてはね。

お客様の中には、あっちの店のほうが安い、
あそこの販売員の人は、感じが良いって、厳しいことを平気で言っていく。
最初はムカついたり落ち込んだりしたけけど、考えてみたら、そうだよな、なんて思って。

俺たちが学生の時、どこどこ店が安いからあっちで買おうとか、
あの販売員、感じ悪いって、聞こえよがしに言っていたよね。
お客様の立場に立てば、家電量販店なんて一杯あるんだから」


沙希は、真剣に健志の話を聞いていた。
そして質問した。

「仕事が嫌になったことってなかったの」

「もちろんあったよ。
最初ごろは、というか今もかな。
何でこんなことまで言われなくてはならないのかって。
上司にはしっかりしろと言われ、お客様からも、何度も叱られ。
怒られている意味が全くわからなく、自分にも腹が立ちなんてね」

「ねえ、たけちゃん、仕事って何だと思ってる?」

「これまた唐突だね。
そんなこと言われてもね。
ただ、最近感じてきていることがあるんだ」


沙希は、興味深そうに健志の表情をまじまじと見た。
そして言った。

「何を感じてきているの?」

健志も、沙希の顔を覗き込むようにして聞いた。

「佐藤、何か悩みでもあるのか。
いつもの佐藤じゃないものな」

沙希は、ぎくりとした。
健志は、自分の気持ちを見抜いている。


沙希は少しおどけて言った。

「悩みって言えば悩みかな。で、何を感じているのか、教えてよ?」

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