現場の真実<2>苦情メール   

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「佐藤さん、もう少ししっかりしてくれなきゃ。
店長から、佐藤さんは社員なので、盛り立てていってください、と言われているんだけど」

と鬼頭は言った。

「えー。
いつ店長は、そんなことを言ったのですか」

「個人面談の時よ。
あなた、社員なのだから、しっかりしてもらわなくちゃ」

「すみません」


沙希はうなだれて見せた。
だが心の中では、鬼頭が話しかけてくれたことがうれしかった。


「佐藤さん、ボーッとせずに仕事しないと、
またさっきと同じようにミスを起こしてしまうわよ」

と鬼頭の声がした。
沙希は再度、

「すみません」

と謝った。

「佐藤さん。
すみませんもいいけど、今のような失敗を繰り返していたら、
お客様がいなくなっちゃうわよ。
社員なのだから、もっとシャキッとやってもらわなくては」

『……社員社員って何が言いたいのか』

沙希の心は、うれしさから、少々うっとうしい気持ちに変化していった。
またそんなコロコロと変化する気持ちに驚いていた。


「とにかく、お客様は、嫌なことがあると、口コミするから」

「えー。どうやって口コミするんですか」

「人に言うってことよ。
例えば、今日、料理が遅いと帰っていったお客様がいたよね。
そのお客様、お昼ご飯を食べ損ねたということよ。
お腹が空いている。
コンビニでパンを買って、会社に帰ったかもしれない。
そうすると、昼食を食べに行ったのにパンを食べているの、
と、周りの人は聞くよね。
そうしたら、20分以上も待たされて食べ損ねちゃったよ、と言うでしょう。
あそこは、料理が出てくるのが遅いよ。
急いでいる時は、利用できない、なんて言っているかもしれないわよ。
これが口コミよ」

「すごいですね、鬼頭さん。
わたし、あのお客様、怒っちゃったな、またメールに書かれるかな、
なんて思ったぐらいで」

「あなた、社員なのだから、もっと頑張ってもらわなくちゃ。
私がちょっと言ったぐらいで、ぐじゅぐじゅしているようでは駄目よ」

『……(えー、鬼頭さん、気づいていたんだ)』

沙希は思わず、

「鬼頭さん、ありがとうございます」

と言葉を発していた。

そんな時、

「ちょっとコーヒーまだですか」

と、先ほどとは違う客から催促の声が上がった。

5人グループの女性客の1人だった。

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