現場の真実<1>共に育つ   

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鈴木は、同じ店で働いているパートである。


この店の開店当初からなので、5年前目になる。
店の中で、一番の古株だ。


由紀は、啓子の言っている意味がわからなかった。

「もう少し詳しく教えてくれる?」

と由紀なりの優しい声で言った。

由紀は、常に1年前の自分のことを思い出しながら、
啓子の質問に答えたり、基本作業を教えたりしている。

『そうそう、そんなことがあった。私も、これ、困ったんだよね』

などと。


また、入社1年しか経っていないのに、
先輩面をしている自分に対して複雑な感情があった。

『まだまだ分からないことだらけなのに、
偉そうぶっているように思われるのではないか。こんな会話の仕方で良いのか』

「鈴木さんには言わないでください」

啓子は、上目使いで由紀に言った。


「言わないわよ」

と由紀は、笑顔で啓子の目を見て言った。

『言うわけがない』

鈴木は、由紀にとっても、いまだに接しにくい人だった。

由紀が何かをしようとした時、

「それはしないほうが良い」

と制してくる。

「ですが……」

などと言おうとすると、

「店のことは、私のほうがよく知っているんだから」

という言葉がすぐ返ってくる。

こういうことが数回あって、由紀は、あまり言わなくなっていた。

「私、どうしたらいいのか、わからなくなりました」

と啓子は言った。



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