調剤薬局の出来事   

(3)        (1) (2) (3) (4) (5)

▼ 登場人物 ………

調剤薬局にて

松本恵美:大学生3年生
………………………




「えーっ?!」

薬剤師は、その患者の言っている言葉の意味が、最初は理解できなかった。
そのため、

「挟まれた?」

とオウム返しをして、患者の顔を覗き込んだ。


患者は、左手の指先を右手で包むようにしていたが、
その右手でドアの方向を差し示した。

薬剤師は、患者が指差した方向を見た。


その患者は、身振り手振りで状況を説明した。


どうも自動ドアが開く側の壁に、左手をついていたようだ。
その時若い男性が薬局に入ってきて自動ドアが開き、
手を挟んでしまったということだった。

薬剤師がその患者の左手を見ると、中指と人差し指の先が少し赤くなっていた。
たぶん、ドアが開き、指の先にぶつかり、びっくりして手を放したのだろう。
少しケガをしたとはいえ、大事に至ってはいない。

薬剤師は、ホッとした。

調剤薬局に入ってきた若い男性患者は、何事が起こったのかわからず、
入口で茫然と立っていた。

手を挟まれたという女性患者が、その若い男性患者に向かって言った。


「この人が入って来た時に、挟まれたんです!」

すると、若い男性患者が言った。

「僕は、ただ薬局に来ただけですよ!」

男性患者の表情はこわばっていた。


もう1人の薬剤師が、指を挟んだ女性患者のところにやってきた。
この調剤薬局の責任者のように見えた。

そして、

「大丈夫ですか」

と声を掛けた。

薬剤師2名は、この女性患者に手の様子を聞いていた。

そして責任者らしい薬剤師が、若い男性患者に声を掛けた。

「すみません。
お名前と連絡先を、こちらにお書きください」

男性患者は、何がなんだかわからないまま、名前と連絡先を記入した。


この様子を見ていた70歳代と思われる男性患者が大きな声をあげた。

「薬剤師が3人いて、そのうちの2人が作業から外れると、
ますます薬がもらえないじゃないか!」



*** *** *** *** ***
 前に戻る≪≪(3)≫≫続きを読む
  (1) (2) (3) (4) (5)