調剤薬局の出来事   

(2)        (1) (2) (3) (4) (5)

▼ 登場人物 ………

調剤薬局にて

松本恵美:大学生3年生
………………………




受付で、診察までに1時間30分ぐらいかかると言われた。

『以前、来た時にはこんなことはなかった。
連休前となると、こんなに患者さんが増えるのか』

恵美は、変なところで感心していた。


やっと診察が終わり、処方箋をもらって、ビレッジ内にある調剤薬局に向かった。
駐車場は、まだ混雑していた。


調剤薬局は、内科の医院から歩いて50歩ほどのところにある。


中に入ると、いくつか長椅子があった。20名ぐらいは座れるだろうか。
だが、どの長椅子にも患者が座っていた。

『すごい人だなあ。
ここも薬をもらう人でいっぱいだ。
時間、掛かるかなー』

などと思いながら、恵美は薬局のカウンターに向かい処方箋を薬剤師に渡した。

薬剤師は、
「こんにちは」と声を掛けたもののそれどころではないという表情だった。

処方箋を受け取りながら薬剤師は言った。

「どうぞ、掛けてお待ちください」

恵美は、周囲を見渡した。

『掛けてって言われても、掛けるところないじゃない』

立って待っている患者もいる。

『仕方がない。
立っていよう』


薬剤師は3名。
全員女性だ。

カウンターの奥まったところで作業をしている姿が見える。
患者が来ると、その中の誰かがカウンターまで出てきて対応するという方法が取られている。

様子を見ていると、この薬局に入ってくる患者はいるものの、
薬を受け取って出ていく患者がほとんどいない。
薬局に入ってくる患者の対応に時間が掛かっていた。

薬剤師の手が足らないのは見て取れる。


恵美は、不安になった。

『この調子だと、薬をもらえるのはいつになるんだろう』

患者同士で会話をしている人はいない。
皆が黙って薬を待っている。
時に「ハア」というため息が聞こえる。
雑誌をパラパラとめくる音が響く。

待合にいる患者の表情に、険しさが見られる。
待合全体に、重い空気が漂っているのは確かである。


そんな時、

「痛っ!」

という声が聞こえた。
それほど大きな声ではなかったが、静かな室内ためか、
薬局の中にいる患者の全員が、声が聞こえた方向に視線を向けた。

その声を聞いて、薬剤師の1人が声を発しただろう患者の傍までやってきた。
そして言った。

「どうしました?」


眼鏡を掛けた70歳ぐらいの女性患者は

「挟まれた!」

と薬剤師に言った。先ほどよりは少し声が大きくなっていた。



*** *** *** *** ***
 前に戻る≪≪(2)≫≫続きを読む
  (1) (2) (3) (4) (5)