キャンセルをめぐって   

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▼ 登場人物 ………

居酒屋にて

清水勇二:飲食店勤務 25歳
矢部友也:勇二の友人 25歳

野崎  :お客様
………………………



「み、店の決まりなので…」

野崎の声に押され気味になりながらも勇二は言った。

野崎は、更に捲し立てるように言った。

「店の決まりだって?!
決まりなら、予約の時にしっかり説明しろよ!
他の店では、キャンセル料なんて、取られたことなんかないぞ」

「あ、でも決まりは決まりで」

勇二は、ここで引き下がってはいけないと、やや大きめの声で言った。

この言葉を聞いた野崎は、大声で怒鳴った。

「店長に代われ!」

野崎の声は、思わず、受話器を放したくなるほどだった。

勇二は、反射的に、

「少々お待ちください」

と言って保留音にした。

勇二の心臓の高鳴りは、ますます激しくなった。

勇二は、昨日の様子を友也に話した。

「で、お前は、どうしたんだ?」

と友也は、勇二に聞いた。

「店長に代わってもらったよ。
俺、わからなかったんだが、どうも常連客みたいなんだ。
店長から言われて思い出した。
常連客と言っても、三か月か四か月に一度ぐらいだけどね。
いつも行っているのにって、そのお客さんは、言っていたそうだよ。
結局、こちらの説明不足ということで、キャンセル料はもらわなかったらしい」

勇二の話を聞いていた友也は、

「俺が、客の立場だったら、やっぱり言っちゃうだろうな。
何で、キャンセル料が掛かるのかって。
ドタキャンするってことは、何か止むを得ない事情があるってことだからさ。
この前、大雨で電車が1時間ぐらい止まっただろう。
あの時、5人で焼肉屋を予約してたんだよ。
店に行けなくなって、キャンセルしたいって電話したら
わざわざ電話をいただき、ありがとうございます、雨の中、気を付けてお帰りください、
とか言われて。気持ちよく対応してもらったよ」


勇二は、少しムッとなった。
他店のことを褒められると、なぜかムカついてしまう自分がいた。



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