キャンセルをめぐって   

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▼ 登場人物 ………

居酒屋にて

清水勇二:飲食店勤務 25歳
矢部友也:勇二の友人 25歳

野崎  :お客様
………………………



「よっ! 」

清水勇二は、矢部友也に声をかけた。

友也は、

「おっ!」

と言って右手を挙げた。


2人が出会う時は、
この「よっ」「おっ」の掛け合いでスタートする。

友也は、人と会う時、右手を挙げる癖がある。
この癖は、いつ頃からだったか。


勇二は、レストラン「ジーロ」に勤務している。
友也は、IT関連の会社に勤務している。

2人は、幼友達である。
家が近所だったこともあり、保育園、小学校、中学校まで一緒だった。

高校、大学は、別の学校だった。

就職先は、勇二は飲食に興味があるということで飲食店に、
友也はコンピューター関係が得意だったこともあり、IT関連の会社に就職した。

高校と大学時代は、疎遠だった。
互いに自分が通う学校の友達との関係が強く、会う機会はほとんどなかった。

道で会った時、

「久しぶり」

と挨拶を交わす程度だった。

就職してから、勇二と友也は、よく会うようになった。
そのきっかけは、仕事帰りに偶然出会ったことに始まる。

「久しぶり」という挨拶からスタートした。

勇二は、互いに社会人になったこともあり、「どこかで飲もうか」と友也を誘った。


約7年間の空白は、すぐ埋まった。
むしろ中学時代よりも、互いのことが理解できた。

職場が違うことは、視点の異なる会話ができ、互いに気づかされることが多かった。
ストレス発散というよりも、モノの捉え方が、だんだん広がっていっているという感覚が楽しかった。
そして、友情が深まっていく感じがしていた。


気がついたら、出会った時は「よっ」「おっ」と言い、
友也が右手を挙げるようになっていた。


2人が出会う時は、いつもの喫茶店か居酒屋だ。

静かに話したい時は喫茶店へ、飲みたい時には居酒屋へと、
これもパターンが決まっている。


出会った早々、勇二は話し始めた。

「昨日、客から電話が掛かってきてさぁ……」



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