#3 顧客満足と顧客期待認知の関係

顧客の期待不一致理論に基づいたフレーワークに従業員変数を付加した考え方について記述する。

下記の図表1は、期待不一致理論に基づいたフレームワークである。

期待不一致理論に基づいたフレームワーク

顧客満足は、
顧客の期待(顧客の購買前期待)と、顧客の感じるパフォーマンス(顧客の購買後評価)の不一致(期待とパフォーマンスの差)に影響されるというものだ。

図表2は、従業員変数を付加したフレームワークである。

期待不一致理論に基づいたフレームワーク 筒木加筆

まず言葉の説明を先にしておく。
「満足」とは、顧客が感じる対象に対する全体満足である。この満足は、大きく分けて2つあると考える。
1つは、1回の購買後の取引特定的満足(初めて店に行って購入した後の満足)である。
もう1つは、累積的満足(何度も購入しての満足。飲食店で言えば、何度も行った後の累積された満足)である。
満足は、取引特定的満足から累積的満足に移行していく。
つまり、最初に感じた満足、何度も利用することにより感じる満足とでは、満足の度合いが変化していくと思われる。

「従業員の顧客期待認知」とは、従業員が想像する顧客の購買前の期待のことである。
次に「従業員のパフォーマンス知覚」だが、他の従業員が実施しているサービス属性の知覚であり自店評価である。

ではフレームワークの説明に入る。
飲食店を事例にして、述べていくこととする。

初めて来店する時、顧客は何らかの期待を持って入店する。

まず、顧客の「期待」から従業員の「顧客期待認知」にのびた矢印について述べる。
従業員は、顧客の表情・態度・会話などから、顧客が何を期待しているのかを認知していく。
例えば顧客がキョロキョロして従業員を探している素振りを見たら、従業員に気づいてほしいと思っているだろう顧客の期待を認知して傍にいく。
「顧客期待認知」の力が強いほど、顧客の期待に応えていくことができる。

次に、従業員の「顧客期待認知」から「従業員のパフォーマンス知覚」にのびた矢印について述べる。
従業員のパフォーマンス知覚とは、自分を含めた従業員の言動が、顧客の期待に応えていると思えば、パフォーマンス知覚は高まる。
パフォーマンス知覚が高まるためには、従業員同士の連携作業が必要である。
他の従業員の動きを察知しながら自分の行動を決定していく。
例えば、今入店した顧客の席に、1人の従業員が水の提供をしていたら、その後に入店した顧客の席に水を持っていくなど、他の従業員の様子を伺いながら自分の行動を決定していく。
それがスムーズになされている店は、
「従業員の顧客期待認知」も高いであろうし、自店に対する「従業員のパフォーマンス知覚」も高くなると推測される。

次に、「従業員のパフォーマンス知覚」から顧客の「パフォーマンス」にのびた矢印について述べる。
従業員のパフォーマンス知覚は、顧客のパフォーマンスに影響される。
なぜなら、従業員が顧客の期待を認知し、連携のとれた対応が出来ている店は、
顧客の期待に応えようとしていることになり、顧客のパフォーマンスも高まる。
これが来店1回目のサイクルである。

次に、再来である。
顧客は前回の満足度合いから、今回に期待を寄せる。つまり、1回目の満足経験が期待にプラスされていく。
例えば、自分のことを覚えていてくれているかもしれないという期待である。
顧客の入店時の行動は、初めての来店時の行動とはすでに異なっている。知っている店という行動になる。
従業員はその様子をみて顧客の期待を認知をする。「先日は、ご来店いただきありがとうございました」などという挨拶をする。
その様子を他の従業員が見ていて、新規客ではないことを知覚する。
そして「いらっしゃいませ」と常連客に接するように対応する。
顧客は、その従業員の行動を見てパフォーマンス評価を行う。
今回の満足は、第1回目の来店時に感じた満足に累積される。

期待とパフォーマンスの間の矢印だが、第1回目は、期待からパフォーマンスへの矢印のみである。
顧客が期待をもって店に行った場合、その期待に影響されてパフォーマンス評価をする。
期待とパフォーマンスの不一致度合いが、満足に影響される。
そして次回の期待に影響されていく。

従業員も、2回目以降、顧客期待認知が累積されていく。
例えば、顧客が来店したとき、よく座る席や毎回注文する料理を認知していく。
パフォーマンス知覚も累積されていく。
ある行動を従業員が起こした時は、顧客の期待がなんであるかが、他の従業員の行動をみることで知覚される。
その行動をみて自分の行動を変化させていく。
このサイクルは、積み重なっていくことになる。

従業員の顧客期待認知が弱ければ、他の従業員のパフォーマンス知覚も弱くなる。
なぜなら、従業員同士の連携が取れず、顧客へのスムーズな対応が困難になるからだ。
そうすると、他の従業員に対するパフォーマンス評価が低くなってしまうと推測される。

従業員の顧客期待認知が低ければ、従業員全体の顧客期待認知が低くなり、
従業員のパフォーマンス知覚も低ければ、顧客の満足を高めることができない。
そうなれば、いつまで経ってもサービスレベルが上がってこないことになる。

以上のことより俯瞰すると、
顧客の満足だけを考えていても、実際にサービスを提供する従業員が、顧客の期待を認知しようとしなければ、顧客満足を高めていくことができないのである。